笛育市更新日記(10/23)

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竹熊健太郎氏が『サルでも描けるまんが教室』でパロディにしていたアレです。


●今日の落語

『嘘つき弥次郎』(後編)


「どんどん逃げて、もうよかろうと振り返ってみると、そこはめっぽう高い山で、あとで聞くと、これは火星のオリンポス山という山なんだそうで。いつのまにか海賊たちをまいて火星まで逃げてきていた」
「ちょっと待て」
「何か?」
「さっきの話じゃ、後からは宇宙海賊が追ってきて、前方にはエーテルが宇宙の外に流れ落ちている宇宙の果てがあって、そこで進退きわまったんじゃなかったのか?」
「なにを言ってるんですか。今どき宇宙の果てからエーテルが流れ落ちているなんてそんなこと三歳のコンノケンイチでも信じていませんよ」
「そういう問題じゃない」
「やれやれ助かったと一息ついていると、そこに大目玉の火星の怪物に追いかけられて金髪の娘が逃げてきた。これが美しいのなんのって、縮緬細工の牡丹燈籠を提げ髪は文金の高髷に結い、着物は燃え立つような緋縮緬長襦袢…」
「いくらなんでも太陽系を宇宙船が飛び回る時代にそのコスチュームはねえだろ」
「よし、あの娘を助けてやろうと覚悟をきめて怪物にとびかかると、怪物もさるもの組みついたこちとらを振り落とそうとさかんに跳ね回る。背中に光線銃を撃ってみたが皮膚が硬くてぶ厚いので内臓までダメージが届かない。そこで股ぐらをさぐってみると大きな火玉があった。これこそクロノ神がわれに授ける火玉とおしいただいて、ぎゅっと握りしめると、さしもの怪物もうーんと唸ってひっくり返って息絶えた」
「火玉って何だ?」
「睾丸のことです。これが金星人の睾丸なら金玉だが火星の怪物だから火玉になる。木星人なら木玉、水星人なら水玉、月人なら月玉、土人なら土玉、日蓮上人なら日玉」
「もういいよ」
「死んだように見えても油断はならない、念のために止めをさそうと、腹をビームサーベルで切り開くと、中から次々とタコのような怪物の子供が飛び出した」
「およしよ、ばかばかしい。おまえさん、怪物の睾丸をつかみ殺したといったろ?」
「へえ」
「美女を追いかけていて睾丸がありゃあ牡だろう」
「そうですね」
「牡の腹から子供が出るかい」
「いえ、そこはスペースオペラですから厳格な科学考証にこだわらず娯楽本位に…」
「だからそういう問題じゃないだろ。せめて『雌雄同体でふたなりだった』ぐらいの理屈はつけろよ」
「ああ、今お前さんがいったとおりだ」
「こん畜生、おれのでまにあわすな」
「そう、そこが畜生のあさましさ……」