笛育市更新日記(10/26)

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●今日の落語

まんじゅうこわい』(前編)


これから30分、あなたの目はあなたの体を離れて、この不思議な世界へと入っていくのです……。

「みんなそろったかい」
「そろったようだ」
「みんなを呼んだのはほかでもねえ。今日はみんなでお茶でも飲みながら自分のこわいものの話でもしようっていう趣向なんだ」
「なんでえ、こわいものの話か。色っぽくねえな」
「そういう留公は何がこわいんだ?」
「おれか、おれは……巨大な猿がこわい」
「巨大な猿?」
「そう、猿がヘリプロン結晶Gを食べて、甲状腺に異常をきたして、巨猿になったらと思うと、もうそれだけでぞっとすらあ」
「やけに設定のこまかい怖さだなあ」
「もう、猿だけでなく巨大なバナナを見ただけで足が前へでないくらい怖い」
「おふくろの話だと、なんでも胞衣を埋めたところを、いちばんさきに通ったものが虫が好かねえそうだ。だから、きっと留公の胞衣を埋めた上を巨大な猿が通ったんだな」
「いや、猿だけじゃねえ。巨大なペンギンも通った。巨大なカメも通った。巨大なモグラも通った。巨大なクモも通った。巨大なタコも通った。巨大なナメクジも通った」
「ずいぶん通ったねえ…アンバランスゾーンみたいなところに埋まってる胞衣だな」
「もう動物が巨大化するというシチュエーションを想像するだけでだめで、だからいまだに放射能のあるプルトニウムは食べられねえ」
「普通食べられねえよ、そんなものは…そのとなりの金ちゃんはなにがこわい?」
「おれは風船だ」
「風船?そんなものが怖いのか?」
「もう、朝起きたら空に輝いているのが太陽じゃなくて巨大な風船だったらと思うだけでぞっとする」
「変なものをこわがるやつもあるもんだ…熊さんはなにがこわい?」
「なにをぬかしやがるんだ、この人工生命M1号めら」
「これはおそれいった。M1号めらはひどいね」
「さっきからだまってきいてりゃだらしがねえじゃねえか。人間は万物の霊長といって、いちばんえれえんだぞ。それがなんだってんだ。猿がこわい、ペンギンがこわい、モグラがこわい、ナメクジがこわいだってやがら……人間やめてセミ人間になっちまえ。巨大ナメクジなんか頭から塩をかけてがりがりと食っちまわあ。ペンギンは頭からペギミンHをふりかけてがりがりと食っちまう。もっとも体が反重力で浮かび上がって少し食いにくいが…」
「威勢がいいねえ。でもおまえにはほんとうにこわいものはないのかい?」
「うん…じつは一つある」
「それはなんでえ」
「じつはね、おれは巨大なまんじゅうがこわい」
「巨大なまんじゅう?」
「アマゾンにモルフォ蝶というなんでも巨大化させる鱗粉をまく蝶がいるんだ。その蝶の鱗粉がかかってまんじゅうがとても食べきれないくらい巨大化するのを考えただけで、ぞーっとなってふるえがとまらない……ああ、想像しただけでもうだめだ。すまねえが奥の部屋で一やすみさせてもらうよ」
以下後編